先週、東京で日本歯内療法学会専門医のセミナーに参加して参りました。
根管治療の専門医は、定期的に専門医のためのセミナーに参加しなければなりません。
今回は、歯の根の治療をした後の土台をどのようにすればよいかというテーマでした。
具体的には、「土台と歯の隙間からの細菌感染や歯の根の破折をどのように防ぐか?」ということです。
まず最近の主流は、金属の土台より、樹脂の土台にシフトしてきています。
理由は、金属の土台は歯より硬いので、咬み合わせの力でクサビ状の力が掛かるので歯根を割る可能性があります。
樹脂の土台は歯と同じぐらいの硬さであれば、もし歯根に為害な力がかかっても、土台の方が壊れてくれれば歯根は助かります。
しかし、金属の土台であれば、金属より強度が低い歯根が割れる可能性が高いのです。歯根が割れれば、抜歯になってしまいます。
歯根の歯質がどのくらい厚みが残っているかのもよりますが、根管治療を何回もした歯は、削られて歯質が少ないことが多いので、土台の種類の選択は非常に重要です。
また根管治療で「悪い歯質は確実にとり、健康な歯質をいかに残すか」ということも重要です。
実際には「除去する歯質と残す歯質のせめぎ合い」で非常に難しい処置なのですが、それをわかって治療するのとわからないで治療するのでは大きく違ってきます。やはり歯質の残すというととが、歯根の破折を防ぐためにも重要なことなのです。
また、残った歯根と土台をしっかりと接着させるということも大切です。
歯根と土台がくっ付かずガタガタしていれば、小さな力がかかっても壊れますよね。
また、ガタガタした隙間から細菌が入る可能性も高いです。
なので、しっかりとした接着というのも大切な要素です。
そう考えると、歯根と樹脂の土台の方が、接着強度が強いのです。
上記のことから、金属の土台と樹脂の土台は、どちらが歯根にとって有利かと言うと、樹脂の土台ということになります。
ただ、注意しないといけないのは、樹脂と歯根がよく接着するので、もし将来根管治療をやり直すことになるとマイクロスコープを使って確認しながら処置しないと、思わぬ失敗を招くおそれがあります。
そのため、最初からしっかりとマイクロスコープで根管治療を行った上で、樹脂の土台(ファイバーポストコア)を歯につけないと後々に患者様や、再治療を行う歯医者も苦労するのです。
※下部の写真は、銀色が金属の土台(メタルコア)、白色が樹脂の土台(ファイバーポストコア)